新書のすゝめ 〜 プロ野球の楽しみ方

1. あぁ、監督 〜 名将、奇将、珍将 . . . 2009 / 野村 克也

あぁ、監督

プロ野球パ・リーグの南海(現・ダイエー)で27年間に渡り選手として、またプレイングマネジャー(監督兼任)として活躍し、1990〜2009年までの20年間でヤクルト・阪神・シダックス・楽天の監督を務めた「ノムさん」こと野村氏による監督論。選手・オーナー・ファン、そして新聞やテレビなどのメディアという「4つの敵」と日々対峙する監督にとって最大の敵は「自分自身」と肝に銘じている野村氏が、強烈なプレッシャーを受けながらチームを勝利に、そして優勝に導く監督の、並大抵ではない苦労を語る。「組織はリーダーの力量以上には伸びない」「名参謀は必ずしも名監督ならず」という技術論は元より、「人を遺してこそ、真の名監督である」という姿勢は、プロ野球監督に限らず社会におけるリーダーの条件と資質を説いている。


2. 巨人軍論 〜 組織とは、人間とは、伝統とは . . . 2006 / 野村 克也

巨人軍論

「1. 巨人軍は常に紳士たれ」・「2. 巨人軍は常に強くあれ」・「3. 巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」... 日本プロ野球界の父と称された実業家・正力松太郎が遺した「巨人軍憲章」である。当時の巨人はこの精神を体現したチームであり、だからこそ他球団の選手は巨人に憧れ、目標とし、そして対抗心を燃やしていたと語るのは、球界のスーパースター・長嶋茂雄を太陽の下で花開く「ヒマワリ」に、自らを人目に付かない日陰でひっそりと咲く「月見草」に例えた野村克也氏。1965-1973年の間、9年連続で日本一に輝いた「V9時代」の巨人を手本としながら、この球団の「凄さ」と近年の「凋落」ぶりを分析する。監督の仕事はまず第一に選手の人間形成という信念を貫いた男が、プロ野球という枠に留まらない「組織論」を展開する。


3. プロ野球「衝撃の昭和史」 . 2012/ 二宮 清純 (にのみや・せいじゅん)

プロ野球衝撃の昭和史

野球・サッカーのみならず相撲・プロレス・ボクシングなどの格闘技にも広く精通しているスポーツジャーナリストが振り返る「プロ野球の昭和史」。あまりにも衝撃的な幕切れとなった巨人-阪神の天覧試合(1959年)、広島-近鉄が3勝3敗で迎えた日本シリーズ最終戦で無死満塁の大ピンチを抑えた「江夏の21球」(1979年)、また時代を遡っては、27歳の若さで戦地に散った伝説の大投手・沢村栄治や、巨人の投手からプロレスに転向して世界チャンピオンとなった馬場正平....。 数々の歴史を紐解くとともに、その舞台裏に遺されていた「新たな真実」にも目を向ける。プロ野球ファンならずとも、読む人を唸らせる「人生劇場」がそこにある。


4. 覚悟のすすめ . . . 2008 / 金本 知憲

覚悟のすすめ

広島カープで11年、阪神タイガースで10年活躍し、1492試合の「連続試合全イニング出場」の世界記録を持つアニキ・金本が2008年に出した手記。今でこそ「鉄人」と呼ばれる金本氏だが、プロに入って2年間は全く芽が出ずクビを覚悟していたほど。自分自身を「いい加減で怠け者で、ビビリ」な人間と分析し、「やれば出来る」と自らを叱咤し続け、ゲームで失敗する不安を消し去るためにひたすら練習を重ねる。それがたまたま結果につながったと回想するように、「天才型」とは真逆の「努力型」で、雑草から這い上がってきたという意外な事実に驚かされる。広島から阪神に移籍したばかりの2003年、就任1年目の星野監督の元で力強くチームを引っ張ってリーグ優勝に導いた男が、仕事や人生に対する「覚悟」を語る。


5. なぜ阪神は勝てないのか? . . . 2009 / 江夏豊・岡田彰布

なぜ阪神は勝てないのか

2008年のペナントレースで2位の巨人に13ゲーム差を追い超されて優勝を逃した監督の岡田氏と、阪神から放出されながらも南海・広島・日本ハム・西武と渡り歩いて「優勝請負人」の異名を取った豪腕のエース・江夏氏による対談。監督やコーチの采配に対する苦言や、フロントによるお家騒動など生々しい話題が盛りだくさん。2009年、真弓監督1年目のシーズンで開幕から4位と5位を行ったり来たりする中の9月に出版された本だが、それから10年以上も経った今もなおタイガースの現状をよく表しており、ファンにとっては痛し痒し...(泣)


6. 勝負強さ . . . 2013 / 井端 弘和

勝負強さ

中日ドラゴンズの名ショートとして活躍し、2002〜2013年の12シーズンに渡って2塁手の荒木選手と組んだ史上最強の二遊間・「アライバコンビ」で有名な井端選手が伝える「プレッシャーに勝つ」ためのメッセージ。堀越高校・亜細亜大と野球の名門で頭角を現しながら、練習中に受けた眼球のケガや膝の手術などで野球を諦めざるを得ない状況に陥るも、1997年のドラフトで星野監督の「守れる内野手が欲しい」という一言によって中日に入団する。翌年に鳴り物入りで入団してきた福留に押し出される形で守備経験の無い「ライト」で2000年の一軍戦に出場するが、そこで結果を残し、翌年には全試合フル出場を果たしてレギュラーの座を奪い取る。本書のタイトルは「勝負強さ」だが、その内容は運が良いとかの話ではなく、いかに工夫して逆境やプレッシャーに勝つか、集中力を切らさずに信念を貫くかというメンタル面の啓発書であり、野球に限らずいろんな世界でスペシャリストを目指す人々を元気付けてくれる。巻末の「アライバ」対談は2人の軽妙なトークが面白く、(笑)マークが20個以上も登場する。ドラゴンズファンは必読!


7. プロ野球解説者の嘘 . . . 2011 / 小野 俊哉

プロ野球解説者の嘘

「この1点は大きいですよ〜」「四番が打てば勝ちますよ!」のような根拠の無い解説や、「先に点を取った方が有利ですね」みたいに誰でも言えるような解説が幅を利かす日本のプロ野球中継。早稲田の理工学部から民間企業(味の素〜住友金属)で研究者としての経歴を経て、スポーツ・アナリストに転身したという変わり者の著者が、過去のデータを元に多くの「解説のウソ」を解き明かす一方で、野村克也氏の「野球は投手が7割」という言葉の信ぴょう性を証明したりする。アメリカ大リーグにも精通し、日本のプロ野球における外国人助っ人の功罪を「感覚」ではなくデータによって分析するなど、プロ野球ファンにとっては興味深い内容。


8. カープはもっと強くなる . . . 2017 / 広瀬 純

カープはもっと強くなる

高校3年の夏に大分県代表で甲子園に出場、東京六大学野球では法政で三冠王を獲得、2000年のドラフト会議で広島から2位指名を受けて入団し、「カープひと筋」で2016年に引退した広瀬選手による手記。彼が過ごした低迷期の真っただ中の2001年から、25年ぶりのリーグ優勝を飾った2016年まで、カープというチームの表も裏も余すことなく披露し、気たるべき黄金時代を予見する。この本が書かれたあとの広島カープは実に3年連続でリーグ優勝を遂げており、まさに本書のタイトル通りに「もっと強く」なっている。今さらながら広瀬氏の見通しの鋭さに「敬礼!」。


9. 「アホ」がプロ野球を滅ぼす . . . 2012 / 江本 孟紀 (えもと・たけのり)

アホがプロ野球を滅ぼす

東映・南海・阪神のピッチャーとして11年間で113勝という成績を挙げながら、「ベンチがアホやから野球がでけへん」という名セリフを残して引退。その後は『プロ野球を10倍楽しく見る方法』などの球界暴露本をヒットさせる一方で、映画やドラマ出演の他にも歌手デビュー、そして参議院議員へと、波乱万丈の「エモやん」こと江本氏がプロ野球の現状に物申す。 2011年11月に勃発した、巨人の清武球団代表が渡邉会長に対して起こした造反劇、いわゆる「清武の乱」における一連の経緯を「アホの典型」と断じるなど、現在のプロ野球界に蔓延する数々の「アホなこと」を糾弾し、その病巣を斬り捨てる。巨人に対しては、「大型補強ばかり繰り返してもファンは喜ばない」、古巣の阪神に至っては「いい加減な監督人事のダメ虎!」など、12球団の全てを歯に衣着せぬ物言いで批判するが、その本意は「プロ野球が国民に長く愛されるように」との思いから、とのこと。


10. プロ野球・二軍の謎 . . . 2017 / 田口 壮(そう)

プロ野球・二軍の謎

関西学院大から1991年にドラフト1位でオリックスに入団(イチローと同期)、95〜96年のリーグ連覇に貢献した後にメジャーに移籍してワールドチャンピオンにも輝き、引退後の2016年からは古巣の二軍監督を務めた田口が、いきなりリーグ最下位に転落する中、若手選手との接し方を「プロ野球の中間管理職」という立場で模索しながら綴った手記。調整中のベテランと新人が入り混じり、「プロの厳しさ」を学ぶ二軍の実態を解説しながら生々しい裏話も満載した楽しい一冊。