1. はじめてのサイエンス . . . 2016 / 池上 彰
分かりやすい解説で人気の文系男子・池上彰による「サイエンス入門」。素粒子とか原子力とか、科学アレルギーの人なら蕁麻疹が出そうなお題について、誰にでも分かるように解説してくれる。水素エネルギー(化学)・生命の誕生と遺伝子(生物)・ウィルスやSTAP細胞(医学)・大地震の危険性(地学)・地球温暖化(環境)など、広〜く浅くレクチャーした内容は、理系の大学生でも楽しめる。サイエンス嫌いな人にも是非ともおススメの一冊。
2. 宇宙は何でできているのか . . . 2010 / 村山 斉 (ひとし)
138億年前に起こった「ビッグバン」(爆発)によって誕生したばかりの宇宙は、素粒子が飛び交う火の玉だったとされている。今も拡大を続けている宇宙だがその成り立ちを知る鍵となるのが、物質を作る最小単位の粒子であるその素粒子だ... ? (汗)。 米国カリフォルニア大学バークレー校教授兼・東京大学カブリIPMU機構長という長〜い肩書きの素粒子物理学者である著者が宇宙の謎を解き明かし、「宇宙はどう始まったのか」「宇宙はこれからどうなるのか」という人類の疑問に挑む。「ニュートリノ」「ヒッグス粒子」「クォーク」など、聞いた事のある言葉を辞書で調べながら読み進んでいるうちは良いのだが、中盤以降は加速度的に難しくなって文系男子などは最後まで読む前にギブアップしそうな展開となっているが、実はこれも素粒子のパワーがなせる技なのか?
3. 科学的とはどういう意味か . . . 2011 / 森 博嗣 (ひろし)
名古屋大学で建築学を学んだ工学博士である一方で、推理小説で作家デビューを飾り、作品に科学関係の専門的な描写や数学の謎解きなどが多く登場することから「理系ミステリー作家」と評される著者が「科学と非科学」の違いを明らかにして、科学的な知識とか考え方について自身の意見を述べる。科学とは一言で言えば「誰にでも再現と観察が出来る現象」のことであり、それを確かなものとする手段が数字や実験であるというもの。読書やスポーツと同じように「科学」を好きになって欲しいという内容の本ではなく、科学を避けて現代を生きる事はもはや不可能であり、科学から目を背ける事は個人にとって「不利益」で、社会にとっては「危険」であるとさえ論じている。ちょっとお堅いテーマでありながら、小説家らしく興味をそそるタッチで書かれた「科学論」は大変に面白く、科学アレルギーになってしまった文系人間にもぜひ呼んで欲しい。
4. 生物と無生物のあいだ . . . 2007 / 福岡 伸一
「埋もれた良書を掘り起こしたい!」というキャッチフレーズで中央公論新社が2008年に設立した「新書大賞」。その記念すべき第1回の大賞に選ばれた本書の著者は、「生物」を細胞レベルまでに細かく分けて、その中のタンパク質やら遺伝子やら、ミクロの世界を調べる分子生物学の研究で一発当てた(かも知れない)福岡センセイ。遺伝子やDNAの仕組みを素人でも分かるように解説し、その研究史に自らのアメリカ修行時代のエピソードを織り交ぜた手法は「科学推理小説」とも呼べるほどのロマンに溢れた一冊。ただ大賞を取ってメジャーになり過ぎたせいか、各界の著名人が手放しで絶賛しているのを見ると、演出が受賞を手伝ったような「狙った感」が漂うかも?
5. 元素111の新知識 . . . 1997 / 桜井 弘 (ひろむ)
水素(H)や酸素(O)など、物質をつくる基本的な構成要素のことを「元素」と呼ぶのだが、出版当時の1997年時点でその存在が確認されていた111種類の元素について「気楽に」・「分かりやすく」・そして「楽しんで」学べるように工夫された傑作。アルミニウムやナトリウムなどごく一般的な元素からストロンチウム・イリジウムのように取っ付きにくい名前のモノまで、11人の日本の科学者たちがギリシャ神話や歴史・語源などを織り交ぜて親切にレクチャーしている本書は450ページ以上にもおよび、普通の新書3冊分のボリュームで「小辞典」とも呼ぶべきもの。その後新たに発見された7つの元素を追加した増補版が、『元素118の新知識』として2017年に出版されている。
6. 99.9 % は仮説〜思い込みで判断しないための考え方 . 2006 / 竹内 薫
「飛行機が空を飛ぶ原理は今でもまだ分かっていない」という驚きのプロローグに続いて、「地震は微生物が起こしているのかも」「地球温暖化と二酸化炭素は関係ない?」のように、現代の科学で常識とされている理論の99.9%は単なる「仮説」に過ぎないと説くのは、東大で物理学を学んでカナダの大学で理学博士号を取ったサイエンスライターの竹内氏。文系理系を問わず「思いこみ」や「先入観」は、科学に限らず経済情勢や人間関係までも狂わせてしまう罠であると定義し、常に「頭を柔らかく」して物事を考えようと啓蒙する。宇宙は地球を中心に回っていると説いた天動説は2千年近くも「真実」とされていたが今では小学生でも信じないように、万人が認める定説も何かの拍子に180度転換してしまう世界を紹介する。本書が書かれた後の2014年に有ったとか無かったとかで世間を騒がしたSTAP細胞だって、今後の研究でまだどうなるか、ホントに分からない?
7. 理系バカと文系バカ . . . 2009 / 竹内 薫 & 嵯峨野 功一
日本人は中学から高校に進学する頃から「理系」と「文系」に大別されるようになり、それは大人になってからも「理系人間」「文系人間」とずっと尾を引くのだが、そもそもこの分け方は明治時代の旧制高校から始まったと言われている。サイエンスライターの竹内氏と、その友人で放送作家の嵯峨野氏の2人がステレオタイプな「理系」「文系」の特徴を分析し、両者の垣根を取っ払ってバランスの良い知性のあり方を考える。日本では文系人間の方が理系人間よりも多く、「理系センス」が足りないと説き、「文系だから」・「理系だから」と自分を型にはめる事を良しとせず、その思い込みから脱出して分離融合のセンスを磨くためのノウハウを伝授する。
8. ゾウの時間 ネズミの時間 〜 サイズの生物学 . . . 1992 / 本川 達雄
東大の理学部で生物学を専攻し、琉球大・東工大などでヒトデやナマコの研究に没頭する一方でシンガーソングライターとしても活躍、「サンゴのタンゴ」など冗談か本気か分からないような曲を出したりして「歌う生物学者」の異名で知られる理学博士の本川氏。ネズミのような小動物は脈拍も動作も早くて寿命が短いのに対して、ゾウは脈拍が少なく動作も遅くて寿命が長いという「現実」を掘り下げ、動物のサイズがその生き方に与える影響をクジラから昆虫・さらには細胞レベルまで解明して、「サイズが違えば時間も違う」という結論に至る。ひいては人類も動物の1種類であることから、「人間が自らのサイズを知る」ことが最も基本的な教養であると説いた内容は、生物学的にも哲学的にも読む者を唸らせる。
9. 生物学的文明論 . . . 2011 / 本川 達雄
18世紀に起こった産業革命から現代に至るまで、全ての「便利なモノ」、例えば機械や自動車・通信やコンピューター・さらには金融工学や貨幣経済までもが数学・物理学を背景とした「技術革新」による成果である事を認めつつも、その結果として人類が直面している環境破壊やエネルギー問題・高齢化社会や赤字国債などに対して、それらを生んだ数学・物理的な発想ではなく、生物学的に解決しようというユニークな講義。「生物は丸くて水っぽく、人工物は四角くて乾いている」・「生物はやわらかく、人工物は硬い」... あまりにも進歩した科学技術のために身動きが取れなくなった人類に、生物学的な処方箋を提言する。
10. 「大発見」の思考法 . . . 2011 / 山中 伸弥 & 益川 敏英
素粒子の研究で2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川氏と、iPS細胞の生みの親で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中氏の2人によるおもしろ対談。 専門家どうしの会話であるのだが、理系の知識が無くても十分に楽しめる。ていうか、中味の大半が人間としての生き方や人生の楽しさを語ったもので、2人のお人柄が良く表れている。益川氏の変人ぶりが目立つが、それをフォローする山中氏の絶妙な舵取りも楽しい一冊。