新書のすゝめ 〜 ビックリ本?

1. 言ってはいけない . . . 2016 / 橘 玲 (たちばな・れい)

言ってはいけない

政治問題からサブカルチャーまで数々のベストセラーを放ちながら、かつて中堅出版社の宝島社で編集者だったこと以外は不明であり、顔出しNGなど何かと謎の多い作家の橘玲が読者に贈る、口には出せない「不愉快な現実」。知能や学歴・年収、さらには容姿そして犯罪歴までもが「遺伝によるもの」とする主張はかなり衝撃的だが、筆者はこれを「残酷すぎる真実」と断言する。「人間は生まれつき平等」ではなく、「努力すれば報われる」は幻想で、「人は見た目ではない」はウソであると、もう身もフタも無い主張のオンパレードで、非常に興味深い反面、大きな危険を孕(はら)む内容には賛否両論。さて貴方はどう読みますか?


2. 大放言 . . . 2015 / 百田 尚樹 (ひゃくた・なおき)

大放言

ベストセラーを連発する人気作家である一方で政治的発言でも物議を醸す百田氏が、炎上覚悟で国民に訴える「放言の自由」。ちょっとした言葉の誤りや言い間違い・表現に対してヒステリックに攻撃するメディアや世論の怖さを例に挙げて、「言葉狩り」によって自由な言論を封殺しようとする原理主義的な勢力に対し、あえて「放言」で反発する。何の努力もせずに「やれば出来る」などと思い込んでいる若者たち、現状から逃げ出して「自分探しの旅」に出る若者たちを「バカ」と一蹴、「好きなことを仕事にしたい」・「人生はコスパで計算」などという考えの甘さと愚かさを断罪する。保守派の論客として「東京大空襲は大虐殺だった」「南京大虐殺は捏造である」「日教組は日本のガン」など、もはや炎上を通り越して「名言」とも呼ぶべき放言の数々は、朝日新聞などのメディアが目くじら立てて喰いつきそうな内容だが、百田ファンにとっては会心の一冊と言える。


3. 円が消滅する日 . . . 2012 / 山田 順

円が消滅する日

2009年に政権を取った民主党が、その無為無策によって日本を崩壊の危機に追い詰めた2012年に書かれた本で、著者は「憂国のジャーナリスト」・山田順。確かにその当時は相次ぐ失政により円高が加速して株価は低迷、さらには2011年の東日本大震災によって日本経済が戦後最悪の危機に瀕していたため、本書の刺激的なタイトルや、「円の価値が下がって日本は経済破綻する」という観測にも現実感があった。しかし2012年に自民党が政権復帰し、安倍政権の元で株高と円安が進むと今度は「円安亡国」(2015/文春新書)という逆の論理を展開するなど、亡国論なら何でもアリという感は否めない(←無いのは節操?)。国の借金が1,000兆円を超えた状況では近い将来に経済破綻が起こり、旧ソ連のような超インフレによって円が紙クズ同然になるという主張には耳を傾ける価値があるかも知れないが、読者レビューでの反応は今ひとつ。


4. 「捨てる!」技術 . . . 2005 / 辰巳 渚

捨てる技術

2000年に出版され、130万部の大ベストセラーとなった『「捨てる !」技術』の増補版。作者の辰巳渚はお茶の水女子大から西武百貨店系のパルコに入社し、筑摩書房の編集者を経てフリーとなった【考現学者】である(世相や風俗などの社会現象から現代とは何かを見いだす学問の研究者)。「あなたが死ねば全部ゴミ」という衝撃的なフレーズで、捨てるという行為を感情から切り離した「技術」であるとし、後の断捨離ブームの火付け役となった。近年は掃除や食事の作法などを親子で学ぶ「家事塾」を主宰、日常生活から人と地域の未来を考える場として「生活哲学学会」を設立して活躍中だったのだが、2018年6月に長野県軽井沢で自ら運転する大型バイクの事故で帰らぬ人となった。少し急ぎ過ぎた感もあったが、充実した人生だったと言える。


5. JAL崩壊 〜 ある客室乗務員の告白 . . 2010 / 日本航空・グループ2010

JAL崩壊

2010年に経営破綻し、国の管理下で再建への道を歩む事になった日本航空。2007年に債務超過に陥っていたJAS(旧・日本エアシステム)と合併し、2008年にリーマンショックを迎えたという逆境もあったかも知れないが、慣習となっていた会社と組合の「仁義なき闘い」や上層部の無責任体質、パイロットと客室乗務員の待遇における差別など、社内の体制が決定的な原因であったと本書は結論付けている。ただ内容の大半が会社や組合、パイロットや乗員、さらには乗客に対する不満をぶちまけた「暴露本」とも呼ばれるもので、企業研究というよりは「スッチーのナイショ話」のような感じ。まぁ面白い事は面白いが、読んだ後はJALのCAやホテルのスタッフまでも変な色メガネで見るようになってしまう、何とも困った一冊。


6. なぜ宇宙人は地球に来ない? . . . 2009 / 松尾貴史・しりあがり寿

なぜ宇宙人は地球に来ない?

「オカルトおたく」だった少年時代を経て80年代には 「キッチュ」の芸名で『お笑いスター誕生』などの人気番組にモノマネやコントで登場、現在では映画・舞台・イベント・DJ・さらには折り紙など、もうマルチすぎて本業が分からない松尾貴史が世界の「超常現象」を片っ端から笑い飛ばす。宇宙人やUFO・超能力や心霊現象、血液型や姓名判断、果てにはピラミッドパワーにマイナスイオンまで、世間一般に「何となく」受け入れられている71件の現象をナナメに分析して次々とぶった斬る内容は痛快そのもの。幅広いジャンルのあちこちに知的かつ「痴的」な用語が登場するため、内容をちゃんと理解するのには辞書とウィキペディアが手放せないほどのハードな読み物なのだが、しりあがり寿のユルい挿絵がそんな緊張感を吹き飛ばしている。


7. 人は見た目が9割 . . . 2005 / 竹内 一郎

人は見た目が9割

劇作家・演出家として活動する一方で、「さい・ふうめい」というペンネームで漫画原作も手掛けている著者による「非言語コミュニケーション」入門。何とも刺激的なタイトルなのだが、その内容は「声」以外の伝達方法、つまり「表情」「動作」などのボディランゲージについて語られており、「人間の9割は外見で決まる」という持論を掘り下げたものではない。そのギャップのせいか、アマゾンの読者レビューには「タイトルと中身が違う」「期待ハズれ」という声が多く、本の内容が「テーマと関係ない部分が9割」というような印象を持たれているのが残念。著者の言いたかったのは、人間は見た目より中身が大切というのは小学生でも分かる、いわば「お約束」なのだが、その中身にたどり着いてもらう為には「見た目」が非常に重要だという事。まぁベストセラー本と言うものは批判されるのが宿命なので、これらの批判も「想定内」だったのかも。


8. 無税生活 . . . 2009 / 大村 大次郎 (おおむら・おおじろう)

無税生活

北欧のデンマーク・西欧のフランスなど先進諸国に比べて日本の税率は安いと言われているが、これは間違い。電気や水道・高速道路など他国に比べて高すぎる公共料金、酒税やガソリン税、そして無理やり払わされる車検料やNHKの受信料など、「税金もどき」を含めるとかなりの重税を強いられている日本国民。国税局で10年間勤務し、現在は税務コンサルタントの著者が「重税大国」の日本で上手に節税している人々、さらにはギリギリ「脱税」に近い暮らしを送っている人々を例に挙げて、驚くべき「無税生活」の実情を紹介する。国税の専門家だからこそ知る「税制のいい加減さ」を暴き、払い過ぎた税金を取り戻すためのヒントを与えてくれる。源泉徴収・給与天引きのサラリーマンだって諦めてはダメ!節税の「手口」は実にいろいろあるのだ。ちなみに著者の名前はペンネームで、顔出しも「厳禁」...


9. やはり、日本経済の未来は世界一明るい . 2015 / 増田 悦佐 (えつすけ)

やはり日本経済の未来は世界一明るい

一橋大学の博士課程からアメリカに渡って大学教員となり、日本に帰国後は外資系証券会社で建設・住宅・不動産アナリストを務めた経済評論家が語る「明るい日本経済」。2012年に始まったアベノミクスが結果を出せず、円安にも関わらず景気が一向に良くならない日本だが、これからは世界的な資源不況の時代へと突入し、経済がサービス主体となる中で、日本人の「庶民パワー」が世界経済を牽引するという嬉しい予測を打ち立てる。「金融緩和で景気が回復」・「財政健全化のために消費税を増税」のような学者と官僚のウソにまみれた政策を批判し、マスコミの常識とは真逆の論説で日本の未来に希望を見出す。日本国民がそのポテンシャルを生かし、正しい知識を持って行動すれば、日本は必ず復活する !?


10. 日本アホバカ勘違い列伝 . . . 2018 / 北岡 俊明

日本アホバカ勘違い列伝

『国民のための戦史教科書』・『政治家がアホやから政治がつまらん』、さらには兄である工学者の正敏氏との共著・『韓国の大量虐殺事件を告発する』などなど、歯に衣着せぬ勢いで反日勢力をぶった切るのは、「戦後70年の歴史観をぶっ壊す!」をスローガンとするシンクタンク戦略大学を主宰する北岡俊明氏。世襲の政治家や芸能人・したり顔でコメントする作家や評論家・それらを持て囃すマスコミなどの勘違いぶりを名指しで一刀両断するのだが、当ウェブサイトにも登場する評論家・専門家・そして論客のセンセイ方までが容赦ない爆撃を受けており、それなりに面白い。読者レビューでは「上から目線」・「何様のつもり?」等の批判と「ごもっとも!」・「痛快!」の賛否が飛び交っている。