新書のすゝめ 〜 仏教・宗教と日本人

1. 無宗教こそ日本人の宗教である . . . 2009 / 島田 裕巳

無宗教こそ日本人の宗教である

「宗教」と聞いて日本人の多くがイメージするのはキリスト教やイスラム教などの外国の宗教や、創価学会や天理教などの新興宗教であり、「あなたの宗教は?」と聞かれて答えに戸惑う人も少なくない。現代の日本人は自分たちを「無宗教」と呼ぶが、それは神や宗教を否定するものではなく、神道と仏教が混ざり合いながら生活に密着した独特の世界観を持った日本人の強みであるのかも知れない。「無宗教こそ日本の力!」、宗教学の第一人者がそう断言する。


2. 日本人に「宗教」は要らない . . . 2014 / ネルケ無方 (むほう)

日本人に宗教は要らない

著者はドイツ生まれ。禅宗の1つ・曹洞宗の僧侶であり、2002年から2020年までの19年間を兵庫県の座禅道場・安泰寺の住職として務めた経験もある。キリスト教やイスラム教は他宗教を否定するが、日本では仏教と神道の間に対立は無く、キリスト教などを否定する事もない。日本人は無意識のうちに、日常生活の中で「禅」の教えを実現しているのであり、ならば日本人に「宗教」など必要ない... ?。ドイツ・ベルリンで牧師の孫に生まれ、キリスト教の信者だった16歳で坐禅と出会い来日、大阪城でホームレス雲水として修行した禅僧が、日本人の宗教観について考察する。


3. お坊さんが困る仏教の話 . . . 2007 / 村井 幸三

お坊さんが困る仏教の話

お寺・お経・葬式・墓参り・死後に付けられる戒名...。多くの日本人にとって半ば常識のように浸透しているこれら仏教の各アイテムに一体何の意味があるのか、いやその前に、人は死んだら次に行く世界があるのか...?。 仏教研究家として今の日本の仏教のあり方に疑問を持つ著者が、身近な「戒名」や「あの世」という言葉を手掛かりにして、仏教の基本を分かりやすく解説していく。法要などでステレオタイプな講話を行うのみで、仏教の教えを広げる努力もせずにお茶を濁すやり方を批判するなど、お寺やお坊さんにとって都合の悪い話にも遠慮なく触れながら、ユーモアを交えた語りで仏教の歴史と「急所」を明らかにする一冊。


4. マイ仏教 . . . 2011 / みうらじゅん

マイ仏教

ムサビ(武蔵野美術大)の学生だった1980年代にコピーライター・糸井重里の事務所に出入りしながらイラストレーターとしてデビュー。漫画を描いたりロックバンドをリードしたりとサブカルチャー路線を進み、1997年には「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞するなど、幅広い分野で活動する「じゅんちゃん」。小学生の時に仏像と出会い、住職を夢見て出身地である京都の東山中学・高校に進むが、途中でエロに興味が出てきて仏像に飽きたという痛い過去を持つが、仏教に関しては永遠のマイブームと断言する。少年時代からの「仏教ファンクラブ」の一人である著者が、その魅力や楽しみ方、さらに仏教から学ぶ生き方について考える。


5. しない生活 . . . 2014 / 小池 龍之介

しない生活

東大の教養学部で西洋哲学を専攻した現役の住職による有難い講話... というよりは、人生を穏やかに生きるためのちょっとしたコツ。迷い・不安・怒り... 人の心が乱れたこんな状態を仏教では「煩悩」と呼ぶのだが、その煩悩を追い払うための方法を伝授する。情報と「つながり過ぎない」・周囲に対して「イライラしない」・自分に「言い訳しない」・他人と「比べない」など、人間の煩悩と同じ数・108項の短い話で目覚めさせてくれる。本書は。『心を保つお稽古』というタイトルで朝日新聞に連載されたエッセイをまとめた一冊で、放っておくとコロコロと変わって乱れまくってしまう「心」を楽にしてくれる。


6. どうせ死ぬのになぜ生きるのか . . . 2014 / 名越 康文

どうせ死ぬのになぜ生きるのか

精神科医という本業の一方で、映画評論・漫画分析など多岐に渡って活躍中の著者が、本書の「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いに初めて向き合ったのは10歳の時。それから40年以上もの間、患者と毎日向き合う生活の中でやっとその答えが出せるのは「仏教しかない」と悟る。仏教の行や瞑想というのは、いつでも誰でも簡単に取り入れるべきという考えを基本に、宗教の専門家でも寺の住職でもない「門外漢」である自分だからこそお役に立てる事もある、という思いを込めた自由な修行への入門書の副題は、「晴れやかな日々を送るための仏教心理学講義」。


7. 禅が教える 人生の答え . . . 2013 / 枡野 俊明 (ますの・しゅんみょう)

禅が教える人生の答え

「わが人生の答えはこれだ」と言い切る人・「晩年になっても分からない」と嘆く人・あるいはせっかく見つけた「答えらしきもの」に見事に裏切られる人....。それらの中でどの人の人生が善きものなのかという問いに対する答えは、「どの人の人生も素晴らしきものである」。横浜市・鶴見区にある曹洞宗の禅寺・建功寺の第18世住職でありながら、たまび(多摩美術大)で環境デザインを教え、また庭園デザイナーとしてマルチな才能で国内外から高い評価を得るマルチ住職・枡野氏の教えが、きっと貴方の心を和らげてくれる事でしょう.... ― 合掌 ―


8. ととのえる . . . 2014 / 枡野 俊明

ととのえる

前項の枡野住職が日常生活における禅の修行を説いた実践版で、副題は『心のストレスを消す禅の知恵』。仕事の悩みの見切り方・他者へのいらだちの手放し方・つい心を忙しくしてしまう時の対処法・自分で創りだしてしまった不安の消し方...。会社や家庭などの日常におけるストレスの消し方の極意がそこにある。


9. 尼さんはつらいよ . . . 2012 / 勝本 華蓮 (かつもと・かれん)

尼さんはつらいよ

著者は大阪生まれの尼僧である。仏教とは無縁なサラリーマン家庭に育ち、イラストレータの仕事で一旗揚げながらも30代の前半で仕事を辞めて、「何となく」出家の道へ。比叡山で修行を重ねて念願の尼僧になるが、宝塚歌劇団のように「清く、正しく、美しい」というイメージとはかけ離れた醜い尼僧たちの人間関係に愛想を尽かして「尼寺から出家」... (!)。その後は京大の大学院・しかも博士課程でサンスクリット語や阿弥陀仏を学び、現在は仏教研究者として全国の各地で教えを広める「ホンモノの尼さん」である。尼寺に興味のある女性、これから尼僧を目指す女性に送るヒントと「傾向と対策」が詰まった興味深い一冊だ。


10. 神社とお寺の基本がわかる本 . . . 2007 / 武光誠・グレイル

神社とお寺

7世紀に聖徳太子が成し遂げたとされる神仏習合は、日本古来の神道と5世紀に日本に伝わった仏教を融合させた、世界でも珍しく良く出来たシステム。しかし大半の日本人は日常的に神社や寺に接することは無く、その区別さえ理解出来ていないのが現状。本書はそんな日本人に、まずは参拝の作法から、葬式のマナーやお祭りの基礎知識など、歴史学者の武光誠が基本の「キ」から教えてくれる。本書は「グレイル」さんとの共著という事で、そのグレイスさんが何者なのかを調べてみると、編集プロダクションの会社名だった。