1. 迷わない。 . . . 2013 / 櫻井 よしこ
舌鋒鋭い強面(コワモテ)の論客としてマスコミから一目も二目も置かれてるジャーナリストの櫻井さん。終戦直後にベトナムの野戦病院で生まれ、ハワイ留学中の19歳の時に父に勘当されて現金5ドルで1人残されたという意外な生い立ちの彼女だが、何とか無事に卒業して日本で貧乏記者としての生活をスタートする。若気の至りで組織との対決も辞さない姿勢を貫き通した時代から、TVキャスターとして活躍したキャリアを通じて「家族」「お金」「時間」「健康」など、さまざまな局面で「ぶれない生き方」を貫いた才色兼備のオピニオンリーダーが、行き先不明の現代社会を生き抜く人々に提言する「幸福論」。
2. 適応上手 . . . 2004 / 永井 明
1988年の著書・「ぼくが医者をやめた理由」がベストセラーとなって作家に転向した内科医の永井明による人生の指南本。カナダ・モントリオール大学に留学し、「ストレス学の父」と呼ばれたハンス・セリエ博士のもとで研究を重ねた経験から、社会におけるストレスのしくみを解り易く解説し、どうすれば人間は楽に生きられるかを教えてくれる。「お金に縛られない」「プライドは持たない」「仕方ないことは仕方ない」と、無駄を取り払って何事にも囚われない自由な生き方を取り入れた永井氏の信条は素朴で潔い。生老病死さえも自然に受け止めようという考えを実践した著者は、本書を出版した2004年に肝臓がんにより56歳の若さで亡くなっており、「遺書」とも呼ぶべき一冊。正直で、飾り気のない生き方のお手本のような人生だ。
3. 何を捨て 何を残すかで人生は決まる . . . 2016 / 本田 直之
「レバレッジシンキング」・「レバレッジ時間術」など、レバレッジ(てこ)の原理を効かせることにより、限られた労力で大きな成果を上げる「レバレッジシリーズ」の著者である実業家の本田氏が勧める「持たない生き方」。身の回りの不要なモノを捨てる「断捨離」や「ミニマリズム」を推奨するのではなく、今の仕事や人間関係に捉(とら)われず、自ら考え・選び・動き・そして自由に暮らす生き方を提言する。モノだけでなく常識・人脈・仕事・お金など、世の「常識」から飛び降りて自分の価値観を突き進めという意見は、本書の発行元である青春出版社が38年に渡って若者に勇気を与え続けたロングセラー月刊誌・『BIGtomorrow (ビッグトゥモロウ)』を彷彿とさせるものがあるが、これを単なるビジネスマンの自慢話と取るか、一度しかない人生への啓蒙と取るかが分かれどころ。
4. 無頼のススメ . . . 2015 / 伊集院 静
立教大から広告大手の電通を経てテレビCMのディレクターとして活躍し、後に妻となる夏目雅子を起用したカネボウの「クッキー・フェース」など500本に上る作品を世に出した作家による人生の指南本。自らを「大酒飲みでギャンブル狂」と称する筆者だが、その感性は繊細で文章は思いやりに溢れており、「無頼を演じているイイ人」なんだろな、というのがこの本から受ける印象。2010年から週刊文春に連載されて人気となった『悩むが花』で読者から寄せられた、仕事や恋愛・家族などに関する深刻な(時にはしょうもない)悩みを伊集院流に一刀両断する斬新な人生相談は文庫本にもなっており、本書と併せて読まれる事をおススメ します。
5. 好運の条件 〜 生き抜くヒント!. . . 2015 / 五木 寛之
1970年から今もなお続いている大河小説「青春の門」の作者であり、アメリカの大ヒット小説「かもめのジョナサン」の翻訳者としても有名な五木氏が、人生で大切なのは努力ではなくて、実は「運」ではなかろうかと最近考えるようになったというエッセイ集。人間一人ひとりが持って生まれた運、「ラッキー」と呼ばれる「幸運」ではなくて「ハッピー」を呼び込む「好運」という運に対して、謙虚に感謝しながら生きていくことが幸せであるという人生の提言書。終戦後の混乱の中、平壌から引き上げる際に母を失い、苦学しながら作家デビューを果たすも三度に渡るうつ病に苦しめられるなど、平穏無事とは程遠い人生を歩んで来た著者が、無常の風が吹く現世で、老いと病に追われながらも心安らかに生き続けるための秘訣を披露する。本書は2014年5月から週刊新潮に連載された『生き抜くヒント!』を一冊にしたもので、人生の達人による「生き方のすすめ」とも呼ぶべき書。
6. 人生を半分あきらめて生きる . . . 2012 / 諸富 祥彦 (もろとみ・よしひこ)
『人生に意味はあるか』や『〈むなしさ〉の心理学』など、生き方に関する多くの著作を世に出して、心理学者・教育学博士・カウンセラーなどの肩書きを持つ諸富氏が唱える「半分あきらめる力」。「あきらめる」とはギブアップするという意味ではなく、物事を「明らかにする」ことであり、人生の半分を占める「どうでも良いこと」で悩まずに、それらを積極的にあきらめて、残り半分の「満たされた人生のために必要なこと」だけに集中して頑張って生きるということ。「理想の自分にはなれない」「子供は親の思い通りにはならない」「最高の恋愛や結婚なんて夢」..... 頑張り通してあきらめない頑固な生き方を良しとせず、人生の半分を上手にあきらめる柔軟な生き方を提案する。
7. 男の引き際 . . .2004 / 黒井 克行
「世界のホンダ」を築き上げながら創業25周年を花道にあっさりと後進に道を譲った本田宗一郎と副社長の藤沢武夫、プロ野球の剛腕投手として入団から5年で99勝を挙げて将来を約束されながら「黒い霧事件」と呼ばれる八百長疑惑によって球界を永久追放となった池永正明、2000年のシドニーオリンピックの女子マラソンで「Qちゃん」こと高橋尚子選手を擁して日本に初の金メダルをもたらした監督・小出義雄など、各界で活躍した男たちの「引き際」を描く。見事な花道で有終の美を飾った男、世論はともかく自分自身が完全燃焼した男、引退など眼中になくひたすら挑戦し続ける男たちを見つめるノンフィクション作家が、男にとって引き際とは何かを探る。
8. 死ぬほど読書 . . . 2017 / 丹羽 宇一郎
日本の大手商社・伊藤忠の会長を務め、民間から初の中国大使として赴任した経歴を持つ著者による「読書のすすめ」。少年時代に名古屋の実家が書店だったため数多くの書物を(タダで)読むという幸運に恵まれ、社会に出てからも「思考力の源泉は読書にある」「本は働く意識を大きく変える」という信念を曲げず、幅広いジャンルの本を読むビジネス界きっての読書家だ。本と言ってもいわゆる「ベストセラー」や入門書・実用書などの「ハウツー本」、そして下世話ネタの週刊誌などではなく「頭を使って読む本」を推奨し、良書と呼ばれる本よりも「面白そうな本」を読む事を薦めている。本を読むことは「その著者に会うこと」と同じであると考え、読むごとに数多くの著者から学ぶ読書の真価はその人の「生き方」にまで表れると信じている丹羽氏は今でも読書を欠かさないと言うが、タイトルはちょっと大げさ。
9. それでも僕は前を向く . . . 2014 / 大橋 巨泉
多くの人気番組を手掛けるマルチタレントとして名を遂げ、53歳の若さで「セミリタイア」を宣言してカナダやオーストラリアで悠々自適に過ごした巨泉氏だが、少年時代は戦時中の学校教育により「天皇のために特攻隊員として死ぬ」のが夢だったと言う。11歳で敗戦を迎え、それまでの価値観が180度ひっくり返ったことで「偉い人の言うことは信用できない」と実感したのが人生の原点となり、その後は自分自身の判断で人生を切り開いていく。本書では著者がその人生で習得した「運」の使い方・「命」の重み・「覚悟」の決め方など、いかなる状況にあっても前向きに生きて行くために必要な「気の持ち方」「心構え」を自らの経験から導き出している。
10. 蛭子の論語 〜 自由に生きるためのヒント . . . 2015 / 蛭子 能収
ヘタウマな絵で一部のファンから人気の漫画家で、競馬・競艇・パチンコなど熱狂的なギャンブラーでもある蛭子さんの人生論。「三十にしてモウ立たず」・「四十にしてまだ惑い」・「五十になっても天命など知らず」、そして気が付けばもう68歳。そんな現代の自由人こと蛭子さんが、今さらながら論語に学んでみた。中国・儒教の真髄を説いた偉大なる思想家である「孔子」の教えと、それとは真逆のゆるゆる人生を送っている「蛭子」の考えとの大きすぎるギャップが面白い。