1. 食い逃げされてもバイトは雇うな . . . 2007 / 山田 真哉 (しんや)
2005年の著書・『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』でミリオンセラーを記録し、現在ではTVなどのメディア出演でも有名な会計士・山田真哉が放った「身近な会計学」の第二弾。「99%」「75点」「第一回」などのように数字に意味を持たせ、経営やビジネスに限らない数字の持つインパクトを上手に使いこなすことを「数字がうまい」と表現し、日常生活で目にする数字の見方・使い方から経営に必要な会計の基礎を分かりやすく解説した一冊。タイトルの『食い逃げされてもバイトは雇うな』の理由は、客単価が1,000円にも満たないラーメン屋の店主が、食い逃げを防止するためにバイトを雇えばその給料が店の利益を圧迫する。食い逃げによる損失分とバイトの給料を比べると、雇わない方がトクというもの。「食い逃げ許すまじ!」のような「感情」ではなく、プラスマイナスで損か得かという「勘定」で判断するのが正解というロジック。
2. 「お通し」はなぜ必ず出るのか . . . 2009 / 子安 大輔
東大の経済学部を出て広告大手の博報堂でマーケティング戦略立案に従事、その後の2003年に飲食業界に転身し、現在は飲食店プロデュース・コンサルティングを手掛ける一方で飲食に関するビジネススクールも主宰する子安氏。製造・小売・流通・サービス等、あらゆるビジネスの原点は飲食業にあると考え、売る側の事情や希望をとりあえず脇に置いた顧客目線でのビジネス手法を提案する。「女性に人気のヘルシー店」や「オーナーの夢を叶えた店」などが簡単に潰れてしまう理由を挙げ、経営者の想いが強い為にハマってしまう落とし穴を分析しながらビジネスの正攻法を語る。タイトルの『お通し』は単なるプロローグなのだが、こういう「つかみ」もけっこう楽しい。
3. あらゆる領収書は経費で落とせる . . . 2011 / 大村 大次郎 (おおじろう)
元・国税調査官という目線から「どうしても税金を払いたくない」という生き方を貫く人々の手法を紹介した『無税生活』(2009/ベスト新書)の著者・おおむら おおじろう(ペンネーム)が解き明かす「領収書のカラクリ」。大企業にせよ個人事業にせよ、経営において会計の果たす最も大きな役割は「利益調整」であり、それは言い換えれば「お金をどれだけ使って、どれだけ残すか」ということ。【利益】 = 【売上】-【経費】 という数式が示すように、利益とは売上から経費を引いた差額なので、売上が顧客の意向で決まるという状況で利益を確保するには、経費を増減するしか術がない。 ならばということで、本書は経費を自由に増減させるマジックを披露する。コンビニ弁当から愛人手当 (?)、ディズニーランドから海外旅行まで、あらゆる領収書を経費にするのは可能なのか?
4. 会社は誰のものか . . . 2005 / 吉田 望 (のぞむ)
東大の工学部から広告大手の電通に入社、ラジオテレビ局で勤務の傍らで社内留学制度により慶応の大学院で経営管理を学び、退社後にはブランド企業やメディア企業向けのリサーチ会社を設立した経営コンサルタントの吉田氏。2005年に勃発した「ニッポン放送株」をめぐるライブドアvs.フジテレビの熾烈な争いや、オーナーの堤氏によるインサイダー取引により崩壊した「西武王国」など、日本企業が直面する数々の事件を前に、「いったい会社は誰のものなのか」という根本的で普遍的な問いを投げかける。かつて松下幸之助が唱えた「企業は社会の公器である」という理念は既に伝説となり、21世紀は新自由主義経済のもと、会社は「従業員のもの」から「株主のもの」へと変革しつつある。本書は歴史的な会社の成り立ちから戦前・戦後・そしてバブル後の日本における会社のあり方、さらにはITの波に乗って急成長するネット企業による社会改革など、多方面から考察した「会社論」である。
5. 「超」 整理法 . . . 1993 / 野口 悠紀雄
調査会社によれば「ビジネスマンが情報検索にかける時間は業務全体の30%」と言われている。つまり1日の仕事の30%が「調べモノ」ということ。ならば「仕事の出来るビジネスマン」になるには第一に情報の整理、という事になるのだが、そこで誰もがやってしまうのが「テーマ別に分類」するという作業。本書はこの「整理は分類なり」という固定観念を破壊して、分類しなくても検索出来る,いやもっと言えば「情報を整理せずに済ます」という方法=「超・整理法」を提案するもの。東大の工学部から大蔵省に入り、アメリカで経済学を学んだ著者が、おびただしい情報の整理と検索を「分類」ではなく「時間軸」を使って実現するという手法を公開する。四半世紀も前に書かれた本だが今でも、いや今後も立派に通用する。
6. マーケティング用語辞典 . 2005 / 和田 充夫・日本マーケティング協会
「会計・税務」、「経済学・経営学」、「流通・マーケティング」という分野において、「第一級の著者が、最新の知識をやさしくコンパクトに、しかも低価格で提供し、ビジネスパースンをサポート」するというキャッチコピーの日経文庫は、日経新聞が発行する「新書版の文庫」である。何じゃそりゃ。人文社会学系の格調高い学術書で知られ、新書ファンには縁の薄い出版社である『有斐閣』から本をばんばん出されている経営学者の和田充夫・慶応大名誉教授が2005年に出版した本書は、企業のマーケティング業務に関する専門用語を解説したハンドブックと呼ぶべきもの。ハロー効果(Halo effect)やアップセリング(Up-selling)のようなカタカナ用語、抱き合わせ販売(Tie-in sales)や固定費(Fixed cost)などの業界用語が英訳付きで解説されており、とっても便利な一冊。
7. マーケティングのすゝめ . . . 2016 / 高岡 浩三 & フィリップ・コトラー
「ネスカフェ」や「キットカット」でおなじみ、スイスに本社を置く世界最大級の食品メーカー・ネスレの日本法人「ネスレ日本」の社長を2011年から務め、革新的な販売戦略を展開する著者が、現代マーケティングの第一人者として知られるアメリカの経済学者、フィリップ・コトラーを招いて21世紀のマーケティングを展望した一冊。石油と電気をエネルギー源として機械・自動車・家電製品などの「モノ」で社会が発達した20世紀に対し、21世紀は「サービス」で顧客の問題を解決する時代に転換したとし、アップルのiPhone を例にとり「顧客の認識していない問題」を掘り起こして解決する手法としてのイノベーションの重要性を訴える。
8. マーケティングの嘘 . . . 2015 / 辻中 俊樹 & 櫻井 光行
1971〜74年生まれの「団塊ジュニア世代」研究で知られるマーケティングプロデューサー・辻中氏と、博報堂を経て現在はマーケティング戦略の立案・販売促進コンサルティングを主宰する櫻井氏の2人が、一般のマーケティング本に書かれてある常識論では計れない「リアルな消費者の姿」を描き出す。本書では特に、団塊の世代を含む「シニア層」と、2歳未満の子どもを育てるミセス/「ポスト・マタニティ層」という2つのグループに着目し、その生活をミクロで追いかける事によって従来からのステレオタイプなマーケティングの嘘を明らかにする。結果として、子育てママは手抜き料理どころか「和食の伝統を守っている人たち」であり、シニア層の外出が増えたのは健康のためではなくて「義務と責任」から開放された自由を楽しむため、という驚きの内容となっており、ステレオタイプな「マーケティングの嘘」を斬りまくっていく。
9. 売る力 〜 心をつかむ仕事術 . . . 2013 / 鈴木 敏文
1974年に日本初の「セブン-イレブン」1号店を東京都江東区に出店、その後同社を日本一のコンビニエンスストアに育て上げ、アメリカの本家までも買収した実業家で、現在はセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問を務める著者による「お客様の心をつかむ仕事術」。流通業界初の銀行・「セブン銀行」を設立し、日本の流通業に数々の革命を起こしたカリスマ経営者が、お客様のためにという使い古された「ウソ」ではなく、「お客様の立場」での考え方を指南する。
10. 社長は少しバカがいい . . . 2016 / 鈴木 喬 (たかし)
消臭力(しょうしゅうりき)や防虫剤の「ムシューダ」、さらには除湿剤の「ドライペット」などのユニークな製品で有名な日用品メーカーのエステー(旧社名:エステー化学)の会長を2007年から務める鈴木氏による社長論。一橋大から日本生命に入社し、営業・業務など26年間のキャリアを積んだ後に創業家のエステーに出向、1998年から社長として陣頭指揮を取った経験から学んだのは「社長は少しくらいバカがちょうどいい」。戦後の混乱期から比べれば今の世の中なんか全然良い。なのに企業社会にまるで元気が無いのは「経営者が悪い」のが原因と断じる。経営者に必要なのは、「運」と「勘」と「度胸」。「頭は下げるためにある」.... 数々の名言が飛び交うビックリ本の副題は「乱世を生き抜くリーダーの鉄則」。思わず吹き出してしまう珠玉のエピソードの中に、会社を率いる社長の覚悟が見えてくる。